ラリアットとは?剛腕・ウエスタンとの違いを図解で解説
※本記事はプロモーションを含みます。
ラリアットとは、走り込みながら太い腕を伸ばし、相手の首や胸を真横から薙ぎ払う一撃必殺の打撃技のこと。この1文で言い切れる、プロレスでもっともシンプルな技のひとつです。要点だけ先に押さえておきましょう。
・どんな技?=分類は打撃技(腕の薙ぎ払い系)。走り込みながら腕を伸ばす体勢から放ちます
・どこに効く?=当てる場所は相手の首・胸。高さがずれると衝撃が逃げるため、この照準が決定力を左右します
・誰の技?=元祖はアメリカ流の「ウエスタン・ラリアット」で日本に広めたスタン・ハンセンさん。日本では長州力さんのリキ・ラリアット、現代はオカダ・カズチカ選手のレインメーカーへと進化
・なぜ効く?=腕力ではなく「走るスピード×全体重」を腕一本に乗せるから。激突の衝撃を支えているのは、実は下半身です
・名前の由来=英語の lariat=「投げ縄」。腕を縄のように薙ぐフォームから。海外では「クローズライン(clothesline=物干し綱)」と呼ばれる同系統の技。「ラリアート」と表記されることもありますが、同じ技です
⚠️ この記事は、観戦を楽しむための「技の構造解説」です。技は絶対に真似しないでください。くわしい注意は本文の中に書いています。
こんにちは、営業部長のウッシです。
「ラリアット」――この技を語るとき、プロレスファンの頭には必ずひとりの男の姿が浮かびます。スタン・ハンセンさん。カウベルを鳴らし、雄叫びを上げながら走り込み、丸太のような左腕を相手の首に叩き込む――あの「ウエスタン・ラリアット」こそ、一撃必殺という言葉がもっとも似合う打撃技です。
本記事では、ラリアットのやり方・かけ方の構造を、観戦理解の観点から5ステップで分解します。「ただ腕を振ってるだけ?」「なんであんなに効くの?」という疑問に、30年プロレスを観てきた部長の目線で答えます。
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📌 この記事でわかること
- ラリアットの正体と、一撃必殺になるしくみ
- やり方・かけ方を5ステップで分解
- 「腕力」ではなく「下半身」がカギという意外な事実
- ラリアットの種類 早見表(見た目の違い×使い手×名勝負を一覧化)+カウンター式・かち上げ式など入り方で呼び分ける型
- スタン・ハンセンさんとウエスタン・ラリアットの関係
- ハンセン→長州・小橋→オカダ選手へと続く使い手の系譜
- 食らったらどうなる?受け手の視点と受け身のリアル
- ラリアットの返し方——かわす・カウンター・真っ向からの打ち合い
- ラリアットの歴史と「投げ縄」という名前の由来
- 小橋建太さん・長州力さんら、歴代の名手たち
- クローズラインとの違い・レインメーカーとの違いなどFAQ
- 名場面を動画で観るには
技の名前を覚えたら、次は「初めての観戦まで」を扱った入門書が近道です。『現代プロレス入門』は注目選手の見方から初めての観戦まで1冊で通しています。
🧬 ラリアットの正体:腕一本に全体重を乗せる「一撃必殺」
なお、この技はスタン・ハンセンさんの代名詞として「ウエスタンラリアット」の名でも広く知られています。「ウエスタンラリアット」と「ラリアット」は基本的に同じ技で、ハンセン流の走り込む型に付いた必殺技名がウエスタンラリアットです(詳しくは後半のハンセンの章で)。
ラリアットは、英語のlariat(投げ縄)が語源。腕を大きく振り抜くフォームが、カウボーイが投げ縄を放つ動きに似ていることから名づけられたと言われます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 英語名 | Lariat |
| 分類 | 打撃技(腕の薙ぎ払い系) |
| 当てる場所 | 相手の首・胸 |
| 体勢 | 走り込みながら腕を伸ばす |
| 語源 | lariat(投げ縄) |
ラリアットの本質は、「走るスピード」×「全体重」×「太い腕」の掛け算です。ただ腕を振るだけなら大したことはありません。そこに走り込みの勢いと体重がすべて乗るからこそ、当たった相手が一回転して倒れる衝撃が生まれるんです。
🤠 ウエスタンラリアットとは?「ウエスタン」が付くと何が違うのか
検索でよく聞かれる疑問なので、先に答えておきます。ウエスタンラリアットは、スタン・ハンセンさんのラリアットの固有名です。技の構造そのものは本記事で解説するラリアットと同じで、「ウエスタン」はハンセンがテキサス出身のカウボーイキャラだったことに由来します。lariat=投げ縄というカウボーイの道具の名前に、西部劇の「ウエスタン」を重ねた、いわばリングネーム付きの必殺技です。
つまり関係はこう整理できます。
| 呼び方 | 意味 |
|---|---|
| ラリアット | 技の一般名称。腕を伸ばして首・胸を薙ぎ払う打撃技の総称 |
| ウエスタンラリアット | ハンセン本人の必殺技としての呼び名(元祖・本家) |
| リキラリアット | 長州力さんのラリアットの呼び名 |
| レインメーカー | オカダ・カズチカ選手の変形ラリアット(相手を引き寄せて打つ) |
「ウエスタンラリアットのやり方」を知りたい人は、このまま次の5ステップを読み進めてください。構造は同じです。違うのは、ハンセンの場合は左腕であることです。
🔥 ラリアットのやり方|5ステップで分解
試合で見るラリアットを、5ステップに分けて解説します。
Step 1:ロープの反動で走り込む
多くの場合、ラリアットはロープに振られた反動を利用して走り込むところから始まります。この助走でスピードを最大化します。
Step 2:腕を真横に伸ばして構える
走りながら、打つ側の腕を真横、あるいはやや前方に伸ばします。肘を曲げず、腕全体を硬い棒のようにして相手に向けます。
Step 3:相手の首・胸の高さに照準を合わせる
腕を振り抜く高さを、相手の首から胸のラインに合わせます。高さがずれると衝撃が逃げるため、この照準が決定力を左右します。
Step 4:全体重を腕に乗せて薙ぎ払う
走り込みの勢いと体重をすべて腕に乗せ、相手を真横から薙ぎ払う。この瞬間、走るエネルギーが腕一本に集約されます。
Step 5:激突の衝撃を下半身で支える
当たった瞬間、自分の下半身を沈めて衝撃を吸収します。ウッシの見立てでは、ここがラリアットの隠れた核心。腕力だけの技ではないんです。
💪 意外な事実:ラリアットは「腕力」ではなく「下半身」の技
ラリアットは見た目こそ”豪腕の一撃”ですが、実は下半身が支える技だとウッシは見ています。
ポイント①:衝撃を逃がさない下半身
激突の瞬間、自分にも大きな反動が返ってきます。これを膝と腰の柔軟性で吸収しないと、打った自分が崩れてしまう。だからこそ強靭で柔軟な下半身が要るんです。
ポイント②:走り込みのスピードが破壊力
腕の太さ以上に、走り込みのスピードが衝撃を決めます。止まった状態で腕を振っても、ラリアット本来の破壊力は出ません。
⚠️ 再掲・免責:これらの構造解説は、観戦時の理解を目的としたものです。技を実際に他人にかけることは、解剖学的に極めて危険であり、絶対に行わないでください。
🤕 ラリアットを食らったらどうなる?|受け手の視点
打つ側ばかり語られがちですが、ラリアットの凄みは「受ける側」に回るとよく分かります。ここは観戦の解像度が一気に上がるポイントです。
首・胸に走り込みの全体重が真横から入るため、当たった瞬間、受け手は体が一回転して背中から落ちることがあります。
なぜ選手は受け身を取れるのか
「あれだけの一撃を毎試合もらって、なぜ壊れないのか?」——観ていて誰もが抱く疑問です。答えは、受け手も訓練を積んだプロだから。当たる瞬間にわずかに合わせて自分から回転し、背中全体で衝撃を分散する受け身を取ります。首の一点で受けきるのではなく、体全体を使って”逃がす”わけです。それでも危険度が高い技であることに変わりはなく、だからこそプロだけが成立させられる領域にあります。
⚠️ 再掲・免責:受け身も含めて高度な専門技術です。一般の方が真似することは絶対にやめてください。
🛡 ラリアットの返し方|かわすか、迎え撃つか
試合では、ラリアットは「食らって終わり」の技ではありません。返し方の攻防こそ、この技の観戦ポイントです。代表的な返しは次のとおり。
- かわす(ダッキング)——走ってくる腕の下に頭を沈めて空振りさせる。空振りした側は勢いを殺せず、隙が生まれます
- 腕を攻撃する——振ってきた腕そのものを蹴りなどで迎撃し、武器である腕にダメージを返す
- 腕を取って関節技へ——伸びてきた腕をキャッチし、そのまま腕への関節技に切り返す。腕ひしぎ十字固めへの切り返しは総合格闘技経験のある選手が得意とする流れです
- 真っ向から打ち合う——避けずに自分もラリアットを叩き込み、正面からぶつけ合う。パワーファイター同士の試合で観られる意地の張り合いで、どちらが先に倒れるかという原始的な攻防は会場が最も沸く瞬間のひとつです
つまり、ラリアットが出そうな場面では「当たるか・かわされるか・打ち合いになるか」の三択ドラマが始まっている——ここを知っていると、走り込みの一瞬が何倍も面白くなります。
🐂 スタン・ハンセンさんとウエスタンラリアット(ウエスタン・ラリアット)
ラリアットを語るうえで、スタン・ハンセンさんの存在は外せません。
ハンセンは1975年に初来日し、1977年1月から新日本プロレスに参戦しました。その中継で、実況の舟橋慶一アナが「ウエスタン・ラリアット」と名づけた一撃は日本中に広まり、やがてハンセンの代名詞的フィニッシュ・ホールドとして定着します。テキサス出身、カウボーイハットにブルロープを振り回しながら入場するそのスタイルとあいまって、ハンセンは日本で”不沈艦”のニックネームで親しまれました。
ハンセンさん本人は、この技について「カウボーイの投げ縄、牛を一発で捕らえる様子からヒントを得た」と語っています(Number)。大学を出たあとNFLのボルティモア・コルツに入団した経歴の持ち主で、まさに”一撃必殺”を体現した男でした。
スタン・ハンセンさんの全盛期と”不沈艦”の異名については、【黒船列伝②】スタン・ハンセンの記事で詳しく書いています。
🔎 「ラリアット」とだけ検索した人の3つの疑問
「ラリアット」とだけ調べた人が、続けて開く疑問がこの3つ
日本で定着したのは「不沈艦」と「ブレーキの壊れたダンプカー」。「不沈艦」は、実況の舟橋慶一さんによれば東京スポーツの桜井康雄さんの命名です
WWE公式も彼を The Lariat と呼んでおり、技名がそのまま通り名に
なお「ウエスタン・ラリアット」はあだ名ではなく技名で、名付け親は実況の舟橋慶一さん
僕が面白いと思うのは、技名がそのまま人の呼び名になったところ
同じ技でも、呼び名ひとつで色が変わる
▶ 決めポーズ——Mリーグの松ヶ瀬隆弥選手が出陣前にとった"剛腕ラリアット"ポーズ
ハンセンさんをもっと読むなら、🐂 スタン・ハンセンさんとウエスタンラリアットへどうぞ
⚡ ラリアットの種類 早見表|見た目の違い×使い手×名勝負
ひとくちにラリアットと言っても、間合い・入り方・当て方でいくつもの種類に枝分かれしています。「あの選手のラリアット、他と何が違うの?」を一目で掴めるよう、代表的な型を早見表にまとめました。
| 種類 | 見た目の違い | 代表的な使い手 | メモ・名勝負 |
|---|---|---|---|
| ウエスタン・ラリアット(走り込み式) | ロープの反動から突進し、太い左腕で首を薙ぐ | スタン・ハンセンさん | 日本にラリアットを広めた原点 |
| リキ・ラリアット | ロープの反動を活かした叩きつけ式 | 長州力さん | 長州力さんの代名詞技 |
| ショートレンジ/居合抜き式 | 至近距離・棒立ちの相手へ腕の振りだけで | 小橋建太さん・潮崎豪 | 助走なしで沈める上半身の強さ |
| 串刺し式 | コーナーに詰めた相手へ突進して叩きつけ | 真壁刀義選手 ほか | 逃げ場がなくダメージが大きい |
| レインメーカー | 手首を掴んで引き寄せ、回転しながら短い一閃 | オカダ・カズチカ選手 | 令和の象徴。手首固めで逃げ場を消す |
| クローズライン・フロム・ヘル | 走り込み式 | JBL | WWEの豪腕の決め技 |
| アックスボンバー | 腕を「く」の字に曲げ、首〜顔面へ振り下ろす | ハルク・ホーガンさん | 薙ぐのではなく振り下ろす兄弟技 |
※分類・名称は資料により表記が分かれる場合があります。ここでは観戦時に見分けやすい代表的な型を整理しました。
以下、特に押さえておきたい型を補足します。
ショートレンジ/居合抜き式ラリアット
至近距離、あるいは棒立ちの相手に、助走をほぼ使わず腕の振りだけで叩き込むタイプ。刀を鞘から抜くような一閃から「居合抜き式」とも呼ばれます。走り込みで距離を作れないぶん、上半身と体重移動だけで衝撃を生む必要があり、腕っぷしの強い選手ほど映える型です。
串刺し式ラリアット
コーナーに詰めた相手へ、助走をつけて突進しながら叩きつける型。相手はコーナーポストに背中を預けているため衝撃を後ろへ逃がせず、ダメージが大きくなります。真壁刀義選手ら、パワー型の選手が試合の流れを作る一手として使います。
リキ・ラリアット(長州力)
長州力さんの代名詞がこのリキ・ラリアット。週刊プロレスは、ハンセンさんのラリアットを何度も体で受けて、そのダメージから自分のものにしていった選手として、長州力さんや小橋建太さんらの名を挙げています。やられた技を奪い返す、というプロレスらしいドラマがこの技には宿っているんです。長州の生き様そのものは長州力さんの記事で詳しく書いています。
レインメーカー(オカダ・カズチカ選手)
現代ラリアットの到達点が、オカダ・カズチカ選手のレインメーカー。相手の手首を掴んで引き寄せ、その勢いで体を回転させながら短い距離のラリアットを首筋へ叩き込みます。手首を握ったまま放つので逃げ場がなく、回転の遠心力まで乗る——走り込み式とは真逆の発想で組み立てられた”進化系ラリアット”です。仕組みはレインメーカーのやり方で5ステップに分解しています。
クローズライン・フロム・ヘル(JBL)
海外にも豪腕の使い手はいます。WWEのJBL(ジョン・ブラッドショー・レイフィールド)のクローズライン・フロム・ヘルは、走り込み式の必殺技です。
アックスボンバー(ハルク・ホーガンさん)
ラリアットの”兄弟技”として外せないのが、ハルク・ホーガンさんのアックスボンバー。腕をまっすぐ伸ばして真横に薙ぐラリアットに対し、アックスボンバーは腕を「く」の字に折り曲げ、斧を振り下ろすように首〜顔面へ叩きつけます。同じ”豪腕の一撃”でも、軌道が「横に薙ぐ」か「振り下ろす」かで別の技になるわけです。構造の違いはアックスボンバーのやり方・ラリアットとの違いで丸ごと1本にまとめています。
そのほかの型|「どう入るか」で呼び分けられるもの
早見表に挙げた型のほかにも、ラリアットは入り方の違いでいくつも呼び分けられています。実況が使う呼び名を、まとめて押さえておくと観戦がラクになります。
- カウンター式——走ってくる相手を迎え撃つ形で放つ型。自分の勢いに、相手が突っ込んでくる勢いまで上乗せされます
- かち上げ式——真横に薙ぐのではなく、下から突き上げるように当てる型
- 叩きつけ式——腕を上から叩きつけるように当てる型。長州力さんのリキ・ラリアットがこの系統です
- フライング/ダイビング式——ロープやコーナー最上段から跳びながら放つ型。高さが加わるぶん、当たる角度が変わります
- 延髄式——正面からではなく、後頭部〜延髄の側へ回り込んで当てる型
- 合体(ダブル)式——タッグマッチで2人が同時に叩き込む型。会場がいちばん沸く見せ場のひとつです
※呼び名と分類は資料によって分かれます。ここでは観戦中に耳にする機会が多いものを整理しました。
📺 ラリアットの名場面を動画で観るには?
📺 公式「技図鑑」ラリアット(小島聡)(新日本プロレス公式)
文章だけで、走り込みのスピードや激突の瞬間の衝撃を理解するのは難しい技です。実際の試合映像で動きを観るのが最短ルート。
ノアの大会は、ABEMAで無料の生中継があります。プロレス観戦のコスパを考えると、まず押さえておきたいサービスです。
どの団体がどのサービスで観られるか(無料枠つき)はプロレス配信サービス比較に、無料視聴の具体的な手順はABEMAでプロレスを無料で観る方法にまとめています。
🎫 その次の一歩|ラリアットを「会場で」観るなら
ラリアットは音が武器の技です。あの炸裂音は、会場のほうが伝わると言われます。
はじめて生観戦するなら、順番はこうです。
- チケットの取り方を知る——先行と一般の違い、売り切れたときのリセール(公式の再販売)まで。プロレスのチケットの取り方ガイドにまとめました
- 会場を決めて、座席を選ぶ——会場ごとに見え方がまったく違います。両国国技館/後楽園ホール/エディオンアリーナ大阪/代々木第二体育館の観戦ガイドに、座席の選び方と当日の動線を書いています
- 遠征なら宿も一緒に決める——各会場の観戦ガイドに、周辺の宿の探し方も入れてあります
🏛️ ラリアットの歴史|「投げ縄」の名前はこうして生まれた
ラリアットという技が、いつ・どうやって生まれ、日本に定着したのか。ここを知っておくと、観戦の解像度がぐっと上がります。
アメリカでは「クローズライン」と呼ばれていた
ラリアットと同じ系統の技は、もともとアメリカでは 「クローズライン(clothesline)」 と呼ばれていました。直訳すると「物干し綱」。走ってきた相手が、ピンと張った物干し綱に首を引っかけて引っくり返る――そんな見た目から付いた呼び名だとされます。腕を物干し綱に見立てた、なんともユーモラスなネーミングですね。
| 呼び名 | 主な使用地域 | 語源 |
|---|---|---|
| クローズライン(clothesline) | アメリカ | 物干し綱 |
| ラリアット(lariat) | 日本 | 投げ縄(カウボーイ用語) |
つまり「ラリアット」と「クローズライン」は、同じ系統の技を別の言葉で呼んでいるだけ、というわけです。
本人が語る由来は「カウボーイの投げ縄」
この技を日本で一気に有名にしたのが スタン・ハンセンさん です。本人は「ウエスタン・ラリアットはカウボーイの投げ縄、牛を一発で捕らえる様子からヒントを得たものだ」と語っています(Number)。一方、実況の舟橋慶一さんは「ラリアットという技は、ハンセンが登場する前からロサンゼルス地区でよく使われていた」と振り返っています。
ハンセンはウェスト・テキサス大学を卒業後、NFLのボルティモア・コルツに入団した元フットボール選手です(膝の負傷で断念)。
「ウエスタン・ラリアット」という名前を付けたのは実況アナ
実は 「ウエスタン・ラリアット」というネーミング自体は、ハンセンが付けたものではないとされています。
名付け親は、ハンセンが新日本プロレスに参戦していた当時、テレビ中継「ワールドプロレスリング」の実況を担当していた舟橋慶一アナウンサーだと言われています。舟橋アナが、カウボーイハットにブルロープ(牛追い縄)という”西部劇そのもの”のハンセンのスタイルから、「ウエスタン(西部式)」を冠して「ウエスタン・ラリアット」と呼んだ――そう伝えられています。
技そのものの破壊力に加え、実況の言葉のセンスが技を”伝説”に押し上げた好例と言えるでしょう。プロレスが「言葉とセットの文化」だということが、よくわかるエピソードです。
🔥 ラリアットの名場面・名手たち
ラリアットは多くのレスラーが必殺技にしてきました。ここでは、特に印象に残る名手を紹介します。
まずは”使い手の系譜”をざっくり
細かい名場面に入る前に、ラリアットがどう受け継がれてきたかを一本の線でつかんでおきましょう。
② 日本での発展:長州力さんの「リキ・ラリアット」、小橋建太さんのラリアットへ
③ 現代への進化:オカダ・カズチカ選手が手首固めから放つ「レインメーカー」で、走り込み式とは別ベクトルの到達点へ
こうして並べると、半世紀近くかけて「殴る」から「掴んで回す」へと技が進化してきたのが見えてきます。それでは一人ずつ。
元祖にして頂点|スタン・ハンセンさん
なんと言っても スタン・ハンセンさん。前傾姿勢で突進し、左腕を振り抜いて相手の首を刈り倒すそのフォームは、まさに一撃必殺の代名詞でした。
ちなみに1984年には、左腕を負傷していたハンセンが、意表を突いて”右腕ラリアット”を初公開し逆転勝利したという一幕もありました。左右どちらでも一撃で沈められる――それだけ技が体に染み込んでいた証拠です。
ハンセンの全盛期と”不沈艦”の異名については、【黒船列伝②】スタン・ハンセンの記事で詳しく書いています。
受けて受けて振り抜く|小橋建太さん
日本人レスラーでラリアットの名手といえば、小橋建太さんを挙げる人は多いはずです。小細工をせず、相手の技を真っ向から受け切り、最後に逆水平チョップとラリアットで試合を締める――そんな”剛”のスタイルで知られた名選手です。
興味深いのは、小橋さんがラリアットを決め技にすると決めたあとの話。ハンセンさんに控室へ呼ばれ、「使うなら一発で仕留める。その気持ちを忘れずに使ってくれ」と言われたそうです。本家から正式に認められた、と小橋さんは振り返っています。
小橋建太さんの生き様は小橋建太(闘魂列伝)で、“剛腕”という言葉の本当の意味は剛腕とは?小橋建太に学ぶ折れない腕力で掘り下げています。
6秒で終わった一戦|佐々木健介さん 対 小原道由さん
2000年12月10日、佐々木健介さんと小原道由さんの一戦は、ラリアット一発で終わりました。記録は6秒です。ゴング直後に勝負がついた試合として、いまも語られています。
※この試合は、新聞・専門誌の当時の記事をまだ確認できていません。日付・顔合わせ・6秒という記録だけを書いています。
受け継いだ使い手たち
その後も、強靭な上半身を武器にする選手たちがラリアットを受け継ぎました。デイリースポーツの「プロレス技50選」は、主な使い手に長州力さん・小橋建太さん・小島聡選手らを挙げています。
中でも小島聡選手は「ラリアットの選手」としてのイメージが強く、力強い振り抜きで多くの相手を沈めてきました。世代を超えて受け継がれ、それぞれの個性で進化していく――ラリアットがプロレスの定番技であり続ける理由が、ここにあります。
💪 “剛腕”の系譜——この称号を背負った男たち
ラリアットの歴史には、ただの技名を超えて「剛腕」という称号で呼ばれた使い手たちがいます。
- 小橋建太さん——“剛腕”という言葉を代名詞にまで高めた人。オレンジ色の腕が振り抜かれる瞬間の説得力は別格でした(→“剛腕”という言葉の本当の意味)
- 小島聡選手——現役でこの系譜を背負う男。2002年6月、ハンセンさんから直接ラリアットの極意を伝授されました。今の新日本でいちばん「昭和の魂」を感じる技かもしれません
そしてその小島聡選手のラリアットが、2026年8月15日・両国国技館で、盟友・天山広吉さんの引退試合を締めくくりました(9分22秒、デイリースポーツ)。詳しくは天山広吉さんの引退試合まとめとテンコジカッターの記事でどうぞ。
🐄(ウッシ小声:「剛腕」って呼ばれるには、技の威力だけじゃなく「その一発で試合が終わる」という信頼が要るんですよね。称号は会場が与えるものなんです)
⚠️ 上記の試合・エピソードはいずれも観戦理解のための紹介です。技の真似は絶対にしないでください。
❓ ラリアットに関するよくある質問
Q1. ラリアットは素人でも真似できますか?
A. 絶対に真似しないでください。本記事は観戦理解のための技術解説です。ラリアットは首や胸に強い衝撃を与える技で、訓練を受けていない人が他人にかけると、頸部・頭部の重大な怪我につながります。
Q2. ラリアットとクローズラインの違いは何ですか?
A. 基本的に同じ系統の技で、違いは呼び名です。デイリースポーツは「英名クローズライン」と紹介しており、辞書(デジタル大辞泉プラス)にも「ラリアート、クローズラインともいう」とあります。日本ではハンセンさんの「ウエスタン・ラリアット」をきっかけに「ラリアット」の呼び名が広まりました。
Q3. なぜラリアットはあんなに効くんですか?
A. 走り込みのスピードと全体重が、腕一本に集約されるからです。さらに当てる高さを首・胸に合わせることで衝撃が逃げにくくなり、一撃必殺の破壊力が生まれます。
Q4. ラリアットは腕力があれば誰でも打てますか?
A. いいえ。ウッシの見立てでは、激突の衝撃を支える下半身がなければ、打った自分が崩れてしまいます。腕力以上に下半身の使い方が重要な技です。
Q5. ラリアットを最初に日本に広めたのは誰ですか?
A. スタン・ハンセンさんです。1977年から参戦した新日本プロレスの中継で「ウエスタン・ラリアット」と名づけられ、これをきっかけに日本中へ広まりました。以後、ラリアットはハンセンさんの代名詞となりました。
Q6. ラリアットとレインメーカーの違いは何ですか?
A. 入り方が正反対です。従来のラリアットはロープの反動から走り込んで放つのに対し、オカダ・カズチカ選手のレインメーカーは相手の手首を掴んで引き寄せ、体を回転させながら短い距離で叩き込みます。手首を握るため相手が逃げられず、回転の遠心力も乗る——ラリアットを「掴んで回す」方向に進化させた変型と位置づけられます。
Q7. ラリアットとアックスボンバーの違いは何ですか?
A. 腕の形と軌道が違います。ラリアットは腕をまっすぐ伸ばして真横に薙ぎ払うのに対し、ハルク・ホーガンさんのアックスボンバーは腕を「く」の字に折り曲げ、斧のように首〜顔面へ振り下ろします。同系統の豪腕技ですが、別の技として区別されます。
Q8. 「ラリアート」と「ラリアット」はどちらが正しいのですか?
A. どちらも同じ技を指します。資料や実況によって「ラリアート」と表記されることもありますが、技の中身に違いはありません。本記事では現在一般的な「ラリアット」表記で統一しています。
Q9. なぜラリアットを食らっても腕(受け手)が壊れないんですか?
A. 受け手も訓練を積んだプロだからです。当たる瞬間にわずかに合わせて自分から回転し、背中全体で衝撃を分散する受け身を取ります。首の一点で受けきるのではなく、体全体で”逃がす”わけです。ただし危険度が高い技であることに変わりはなく、プロだけが成立させられる領域にあります。一般の方は絶対に真似しないでください。
Q10. ラリアットの和訳は?
A. 「投げ縄」「つなぎ縄」です(プログレッシブ英和中辞典)。スペイン語から英語に入った言葉で、家畜を捕らえる道具の名前が、そのまま技名になりました。腕を一本の縄のように振り抜くフォームと、道具の名前が重なっているわけです。
Q11. 英語では何と言う? WWEで「クローズライン」と呼ぶのはなぜ?
A. 英語圏での一般名はクローズライン(clothesline)です。名詞の意味は「物干し綱」で、辞書(プログレッシブ英和中辞典)にはアメフトの「タックル」という意味も載っています。
Q12. ダブルラリアットとは何ですか?
A. 使われ方が3つある言葉です。①両腕を横いっぱいに広げ、2人まとめて薙ぎ倒す型。②タッグの2人が同時に1人へ浴びせる合体技。③打ち合いで両者のラリアットが同時に入って2人とも倒れる”相打ち”の場面。実況では③も「ダブルラリアット」と呼ばれます。本文の「真っ向から打ち合う」で触れた、会場がいちばん沸くやつです。
Q13. ラリアットで死亡した選手はいるのですか?
A. ラリアットが直接の原因と公表された死亡事故は、公式に確認できるものはありません。ただし、走り込みの全体重が首まわりに集中する技である以上、首・頸椎への負荷が大きいことは確かです。プロが受け身とセットで訓練してようやく成立する技であって、一般の方が真似れば取り返しがつきません。絶対にやめてください。
Q14. プロレスで一番痛い技は何ですか?
A. 受け手の体格・受け身の技術・当たり所で変わるので、ひとつに決められる問いではありません。
📚 出典・参考(14件)
- デイリースポーツ「プロレス技50選【11】ラリアート」 ── 英名クローズライン・ハンセンさんが広めた・主な使い手
- コトバンク「ラリアット」/「ウエスタン・ラリアット」/「リキ・ラリアット」/「アックス・ボンバー」/「レインメーカー」 ── 技の語釈(デジタル大辞泉プラス)
- コトバンク「スタン ハンセン」(現代外国人名録2016) ── 出身地・NFL入団・1975年初来日・1977年1月新日本参戦・「不沈艦」
- web Sportiva「外国人レスラーを際立てた言葉の力」(2ページ目) ── 「不沈艦」の命名・舟橋慶一さんが「ウエスタンラリアット」の名づけ親
- web Sportiva「スタン・ハンセンのリング内外の顔」(柴田惣一) ── 「ブレーキの壊れたダンプカー」・リキ・ラリアット
- Number Web「スタン・ハンセンの名言」 ── 「カウボーイの投げ縄…ヒントを得た」
- BBM 週刊プロレス昔話「右腕ラリアットを本邦初公開」 ── 1984年3月30日の右腕ラリアット
- BBM 週刊プロレス昔話「ハンセンが小島聡にラリアットの極意を伝授」 ── 2002年6月23日の直接指導・体で受けて自分のものにした選手
- 東スポnote 小橋建太連載#6 ── 「使うなら一発で仕留める」
- デイリースポーツ 天山広吉さん引退試合 ── 9分22秒・ラリアット
- WWE公式 Stan Hansen/JBL ── 得意技の表記・The Lariat の呼び名
- コトバンク英和「lariat」/「clothesline」 ── 和訳(プログレッシブ英和中辞典)
- CLIP STUDIO ASSETS「ラリアットポーズ」 ── 素材「ラリアットポーズ」
- ABEMA TIMES ── 松ヶ瀬隆弥選手の”剛腕ラリアット”ポーズ
※掲載URLは2026-10-09時点でアクセス確認済みのもののみ記載しています。
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⚠️ 再々掲・免責:本記事はあくまで観戦理解・技術構造の解説目的です。プロレス技を一般の方が他人にかけることは、極めて危険な行為であり、絶対に真似しないでください。
🐄 ウッシのひとこと:一点に、全部を乗せる
ラリアットの凄みは、「走るスピード・体重・腕力、その全部を一点に乗せる」ところにあります。器用にあれこれやる技ではない。むしろ究極にシンプル。だからこそ強い。
仕事でも、これは効くんですよ。あれもこれもと手を広げると、結局どれも中途半端になる。でも、「今日はこの一件に全部を乗せる」と決めて全リソースを一点に集中させると、相手にちゃんと響く提案ができる。器用貧乏より、一撃必殺。ハンセンのラリアットは、その潔さを教えてくれます。
技のフォームを知ると、プロレス観戦は確実に面白くなります。それではまた次のプロレス記事でお会いしましょう。
営業部長のウッシでした。
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