ダイビングヘッドバットとは?やり方と危険性を図解|天山広吉
※本記事はプロモーションを含みます
⚠️ 【最重要・免責】本記事はプロレス観戦を深く楽しむための「技術構造の解説」です。ダイビングヘッドバットは、プロレス技のなかでもかける側の頭部・頸椎に直接ダメージが返ってくる特異な技であり、専門的な訓練と受け身の技術、そして安全管理下でのみ成立します。一般の方が真似をすれば、自分自身と相手の双方に、生涯にわたる重大な障害を残す危険があります。絶対に真似しないでください。
「コーナーのてっぺんから、頭で突っ込んでいくやつ。あれ痛くないの?」
「ダイビングヘッドバットって、かけたほうが危なくない?」
こんにちは、営業部長のウッシです。
この質問、実はプロレス技の質問のなかでいちばん核心を突いています。答えを先に言うと——痛いです。かけたほうが。
プロレスの技は、基本的に「相手を痛めつける」ために設計されています。ところがこの技だけは違う。自分の頭蓋骨を凶器として使うということは、同じ衝撃を自分の頭と首でも受け止めるということです。武器と自分の体が同一なので、逃げ場がない。
しかも面白いことに、この技は誰かが発明したものではなく、ある事故から生まれています。今日はそこから話を始めます。
✅ 30秒で分かる|ダイビングヘッドバットとは
- コーナー最上段もしくはセカンドロープから跳び、空中で体を大きく広げ、仰向けになった相手の頭部または肩口へ、自分の頭を叩きつける飛び技です
- 元祖はハーリー・レイスさんのオリジナル技とされています。しかも成り立ちは「トップロープに登ったところで体勢を崩し、そのまま落ちてしまった事故」——観客の反応が良かったので、正式な持ち技になりました
- この技の宿命は「かける側が、自分の頭と首を差し出す」こと。資料でも外傷性脳損傷との関連が指摘される技として扱われています
- 日本での使い手はダイナマイト・キッドさん、初代タイガーマスク(佐山聡さん)、新崎人生選手、本間朋晃選手(「こけし」)ほか多数。天山広吉さんも凱旋帰国後のフィニッシャーとして使用していました
- 天山さん版の特徴は、トップロープとセカンドロープにそれぞれ足を置き、観衆に見得を切ってから跳ぶこと。のちに繋ぎ技へ役割が移りました
🐄(ウッシ小声:「事故から生まれた技」というのは、プロレス史でもかなり珍しい部類です。しかも生みの親が、その事故を捨てずに拾った)
📌 この記事でわかること
- ダイビングヘッドバットの定義と、「事故から生まれた」誕生の経緯
- やり方を「登る・跳ぶ・突き刺す」の3工程で図解分解
- この技だけが背負う宿命——かける側が自分の頭と首を差し出す構造
- 元祖ハーリー・レイスさんが払った代償と、彼が守り続けたこと
- ダイナマイト・キッドさんの「頭部狙い」という異常な精度
- 天山広吉さんのダイビングヘッドバット——見得を切る跳躍と、1995年のある夜
- 8月15日・両国国技館について、言えること/言えないこと
💥 まず構造から|「凶器が自分の一部」という唯一の技
定義から押さえます。ダイビングヘッドバットとは、コーナー最上段もしくはセカンドロープからジャンプして空中で体を大きく広げ、仰向けになった相手の頭部または肩口に自身の頭を叩きつける技です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 分類 | 飛び技/頭突き(ヘッドバット)系 |
| 元祖 | ハーリー・レイスさんのオリジナル技とされる |
| 発射台 | コーナー最上段、またはセカンドロープ |
| 着弾点 | 仰向けの相手の頭部または肩口(胸部・腹部を狙う流派もある) |
| 空中姿勢 | 体を大きく広げ、背中を反らせる |
| 最大の特徴 | 凶器が、かけ手自身の頭蓋骨 |
ここが他の飛び技と決定的に違うところです。ムーンサルトプレスやダイビングボディプレスは広い面で着地するので衝撃が分散されます。ダイビングヘッドバットは頭という一点に全体重と落下エネルギーが集まる。しかもその一点は、人間の体でいちばん守らなければいけない場所です。
・ムーンサルトプレス=背中・体全体で着地(面で分散)
・ダイビングボディプレス=胴体で着地(面で分散)
・ダイビングエルボードロップ=肘で着弾(点だが、脳から遠い)
・ダイビングヘッドバット=頭部で着弾(点で、しかも脳そのもの)
空中殺法全体のなかでの位置づけはプロレスの空中殺法・飛び技まとめ【危険度つき】に整理しています。あの記事でも、この技は危険度の上位に置きました。
🔥 やり方を3工程で|登る・跳ぶ・突き刺す
観戦理解のために、資料に記録されている動きを工程で分けます。
工程①:登る——相手を仰向けにしてから、最上段へ
前提条件があります。相手が仰向けで倒れていること。この技は動いている相手には当てられないので、直前に必ず相手をマットへ倒す一撃が入ります。
そしてコーナーへ。ここがこの技のいちばん長い時間です。登ってから跳ぶまでの「間」が長く、その数秒間、会場は完全に静まるか、逆に爆発します。
天山広吉さんの場合、この工程に独特の作法がありました。資料には「トップロープとセカンドロープにそれぞれ両足を置き、観衆に見得を切ってから放たれるムーブが特徴」と記されています。両足の高さが違うんです。片足を最上段、もう片足を1段下に。あの不安定な足場で仁王立ちして客席を煽る。
工程②:跳ぶ——空中で体を大きく広げる
跳躍したら、空中で体を大きく広げ、背中を反らせます。
理由は2つ。ひとつは見栄えで、体が広がるほど落下が大きく長く見える。もうひとつは頭を先行させるため。背を反らせると、体の中で頭がいちばん低い位置に来る。つまり着弾の順番を「頭が一番」に固定する姿勢なんです。
そしてここが残酷なところで、この姿勢を取った瞬間、かけ手には制動手段がありません。手も足も広げてしまっているので、途中で軌道を変えられない。相手が転がって避ければ、そのまま自分の頭がマットに直撃します。
🐄(ウッシ小声:飛んだあとに引き返せない。営業で言うと、社長決裁を出したあとの提案書です。もう祈るしかない)
工程③:突き刺す——頭部または肩口へ
着弾点は仰向けの相手の頭部、または肩口。使い手によって狙う場所が違い、ここがその選手の思想が出るところです。
- 頭部を狙う流派:威力は最大。ただしかけ手の頭にも最大の衝撃が返る
- 肩口・胸部・腹部に当てる流派:結果として相手の比較的柔らかい部位に着弾する形
元祖のハーリー・レイスさんは後者でした。そして、ダイナマイト・キッドさんは前者から始まり、のちに後者へ移った——この話は次の章の主題です。
⚠️ 再掲・免責:この技は、受け手が受け身と当て方の技術を持ち、かけ手も高度な訓練を積んで初めて成立します。訓練を受けていない人が真似をすれば、頸椎損傷・脳挫傷など、生涯にわたる障害を負う可能性があります。観戦の理解だけに留めてください。
🧠 この技の宿命|かける側が、自分の頭と首を差し出す
ここからが、この記事のいちばん重い章です。慎重に、確認できた範囲だけを書きます。
資料が明記していること
Wikipedia「頭突き」の健康被害の項には、こう記されています。プロレスにおいてヘッドバットは効果的な技である半面、過度の濫用により掛け手に脳震盪や慢性外傷性脳症といった健康被害が現れる場合があると。頭突きの多用により脳障害を呈した代表例として、大木金太郎さんの名が挙げられています。
そして、ヘッドバットのなかでもダイビングヘッドバットは特に外傷性脳損傷との関連性が指摘される技であり、複数の使い手の症例から高いリスクが存在する技であると認知されている——と続きます。
つまりプロレス技として、危険性が名指しで文書化されている数少ない技のひとつです。
元祖・ハーリー・レイスさんが払ったもの
元祖のハーリー・レイスさん(1943年4月11日-2019年8月1日/NWA世界ヘビー級王座通算8回・「ミスター・プロレス」)の証言は、この技を語るうえで欠かせません。
Wikipediaがインタビュー記事を出典として記録しているところによれば、この技はもともと、トップロープに登った際に体勢を崩したまま落下してしまった「事故」により偶然生まれたものでした。相手が転がって避け、レイスさんは体勢を立て直そうとしたものの落下し、結果としてヘッドバットの形になった。観衆の反応が良かったことから、正式に持ち技として使うようになったといいます。
そして代償の話です。レイスさんの技は受け手の胸部や腹部など、比較的柔らかい部位に着弾する形だったとされます(日本語版Wikipediaの記述。ただし脚注元のインタビュー原文にこの記載はなく、着弾位置の評価は資料により異なります)。確かなのはこちら側です——長年の使用で、レイスさん自身の背中は痛めつけられたとご本人が語っています(日本語版Wikipediaは「脊髄・頸椎に重い後遺症」とより強い表現で記しています)。
同じインタビュー記事には、もうひとつ、私がこの記事を書こうと思った一文があります。
長年の使用で、自分の背中は壊れた。それでも——
この技で相手に怪我をさせたことは、一度もなかった
※Inside Pulse掲載のレイスさん本人インタビューにもとづく記述(Wikipedia経由で確認・原文も参照)
自分の体を壊しながら、相手には一度も怪我をさせなかった。この技を作った人が、この技のいちばん正しい使い方を示していたわけです。
ダイナマイト・キッドさんの「頭部狙い」
一方で、相手の頭部を狙ったことで日本のファンの心を掴んだ人がいます。ダイナマイト・キッドさん(1958年12月5日-2018年12月5日/「爆弾小僧」)です。
資料によれば、キッドさんのダイビングヘッドバットの最大の特長は「相手の頭部を狙って繰り出している点」でした。新日本参戦初期、石頭が自慢だったスキップ・ヤングさんを頭部狙いのダイビングヘッドバット一発でフォールした際、勝ち名乗りを受けるキッドさんの額は血に濡れていたといいます。自らのダメージを顧みないこの特攻ファイトが、日本のプロレスファンのハートを掴んだと伝えられています。
そして——さすがに自分に跳ね返るダメージを考慮してか、徐々に肩口や胸部を狙うようになったとも記されています。
キッドさんは、コーナーから離れた相手には非常に長い飛距離で、コーナーのほぼ真下にいる相手には倒れ込むような「直下式」(垂直落下式ダイビング・ヘッドバット)を使い分けました。飛距離まで自在だったわけです。
キッドさんが晩年に車椅子生活を余儀なくされた要因として資料が挙げているのは、現役時代のステロイド剤をはじめとする多種の薬物投与と、1986年12月に負った椎間板の大怪我です。「ダイビングヘッドバットが原因で車椅子になった」と一対一で結びつける記述ではありません。
確認できるのは、①この技が外傷性脳損傷との関連を指摘される技であること、②その症例としてキッドさんの名が挙げられていること、③キッドさんの晩年の身体状況には複数の要因が挙げられていること——ここまでです。因果を一本の線でつなぐのは、本記事ではやりません。
なお、1991年の全日本プロレス・世界最強タッグ決定リーグ戦最終日、キッドさんは試合直前に現役引退を表明。その試合で代名詞のダイビングヘッドバットでピンフォール勝ちを収め、リング上で胴上げされています。引退を告げたその夜の決着も、この技でした(※キッドさんはその後1993年に復帰し、1996年10月のみちのくプロレス両国大会が最後の来日となりました)。
🐄(ウッシ小声:引退を告げた夜に、自分を最も削ってきた技で勝つ。かっこよさと痛ましさが同居していて、私はこの記録を読んで少し黙りました)
「こけし」と頸椎——本間朋晃選手の場合
日本でいまいちばん有名なダイビングヘッドバットは、本間朋晃選手の「こけし」でしょう。トップコーナーで直立し、頭を斜に構えて相手を威嚇しながら落ちていく独特のフォームです。
技名の由来がまた良くて、観戦していた子どもが「こけしみたい」と言ったことと、パートナーの真壁刀義選手が「山形出身なんだからこけしでいいんじゃない?」と口にしたところから来ています。
本間さんは2017年3月、沖縄大会で中心性頸髄損傷という重傷を負い、477日の欠場を経て2018年6月23日に地元・山形で復帰しました。そして2026年7月4日、古傷の首の不調を理由に現役引退を表明しています。
ここも因果を混ぜないでおきます。2017年の負傷は、相手選手の別の技を受けた際に起きたものとして報じられており、「こけしが原因で頸髄を損傷した」という報道ではありません。ただ、頭から突っ込む技を代名詞にした選手が、最終的に首を理由にリングを降りる——この事実の重さだけは、そのまま置いておきたいと思います。本間さんの物語は【闘魂列伝㉖】本間朋晃にまとめました。
📺 動画で観る(公式)
言葉より、1回見たほうが早い技です。新日本プロレス公式チャンネルから、頸髄損傷の長期欠場を経て本間朋晃選手が山形のリングに帰ってきた日の映像を。あの「こけし」(復帰戦で披露されたのは助走式の「小こけし」)が、477日ぶりに客席の目の前で放たれます。
📺 本間朋晃選手、奇跡の復活!!【こけし is BACK!!】(新日本プロレスリング株式会社 公式)
🌏 使い手の系譜|「頭が硬い」だけでは足りない
資料に名前が挙がっている使い手を、確認できた範囲で整理します。
| 使い手 | 呼称・特徴 |
|---|---|
| ハーリー・レイスさん | 元祖。事故から生まれ、この技で相手を怪我させなかったと記録される |
| ダイナマイト・キッドさん | 頭部狙い→のちに肩口・胸部へ。長距離と直下式を使い分けた |
| 初代タイガーマスク(佐山聡さん) | ツームストーン・パイルドライバーからの連係を、ライバルのキッドさんから「そっくりいただいた」と記録されている |
| ジミー・スヌーカさん | ジャンピング・ヘッドバットの使い手でもある空中戦の先駆者 |
| 新崎人生選手 | 「念仏ダイビング・ヘッドバット」 |
| 本間朋晃選手 | 「こけし」。小こけし・大こけし・こけしロケットなど派生多数 |
| 4代目タイガーマスクさん/エル・サムライさん | 日本のジュニア戦線での使い手 |
| 天山広吉さん | 凱旋帰国後のフィニッシャー。見得を切ってから跳ぶ |
※上記はWikipedia「頭突き」の使い手一覧および各選手の項にもとづく整理です。資料により表記・扱いが異なる場合があります。
面白いのは、体格も階級もバラバラだということ。115kgのヘビー級からジュニアの選手まで幅広い。この技だけは体重で決まらないんです。決めるのは高さと、覚悟と、当て方の技術。技全体のジャンル分けはプロレス技 一覧【図解】8ジャンル保存版にまとめてあります。
🐃 天山広吉さんのダイビングヘッドバット|見得を切ってから、跳ぶ
さて、8月15日に引退した猛牛の話です。
天山広吉さん(1971年3月23日・京都市出身/183cm・115kg/1991年1月11日デビュー/IWGPヘビー級王座4度戴冠・G1 CLIMAX優勝3回)にとって、ダイビングヘッドバットは凱旋帰国後に使用したフィニッシャーと資料に記されています。
天山さんは1993年6月から海外武者修行に出て、オーストリアのCWAでCWA世界ジュニアヘビー級王座を2度戴冠。その後カルガリーで大剛鉄之助さんのもとで肉体改造を行い、1995年1月4日、凱旋帰国に合わせてリングネームを「山本広吉」から「天山広吉」へ改名しています。ヘビー級で戦うと決めて帰ってきた男が持ち帰った武器のひとつが、この技でした。
フォームの特徴——足の高さが違う
片足が最上段、もう片足が1段下。不安定な足場で、あえて時間を作ってから跳ぶわけです。技としての合理性でいえば、さっさと跳んだほうがいい。相手に逃げる時間を与えるだけですから。
それでも見得を切る。この一拍が、天山広吉さんというレスラーの本質だと私は思っています。モンゴリアンチョップの「シュー」の唱和もそうですが、この人の技はいつも、放つ前に会場と一回握手しているんです。
1995年2月12日——格上を、この技で食った夜
天山さんのダイビングヘッドバットで、最も大きな結果を残した一夜が記録されています。
1995年2月12日、後楽園ホール夜興行。天山さんは蝶野正洋さん・ヒロ斎藤選手と組み、長州力さん・橋本真也さん・平田淳嗣さん(スーパー・ストロング・マシン)組と対戦。この試合でダイビングヘッドバットで長州力さんからピンフォール勝ちを収め、番狂わせを起こしています。そのまま蝶野さんらと「狼群団」を結成し、一躍トップレスラーの仲間入りを果たしました。
この日付、覚えておいてください。その8日前の2月4日、天山さんは橋本真也さんのIWGPヘビー級王座に挑戦して敗れています(当時の最年少挑戦記録とされる挑戦です)。
頂点に挑んで敗れた8日後に、長州力さんから3カウントを奪った。そしてその一撃が、ダイビングヘッドバットでした。
同じ時期に持ち込んだもうひとつの武器がマウンテンボムです。凱旋直後の天山さんは、担いで落とす技と、飛んで頭からいく技——両極端の2枚を持って帰ってきていたことになります。
🐄(ウッシ小声:凱旋してきた若手が、8日で這い上がってくる。当時のプロレス、時間の流れ方がおかしい)
宙吊り事件と、繋ぎ技への移行
天山さんのダイビングヘッドバットには、忘れられないハプニングも記録されています。1997年、橋本真也さんとの試合でこの技を仕掛けようと飛び上がったところ、リングシューズがロープに絡まって宙吊り状態になり、試合が一時中断——。
コーナーで見得を切る技の宿命というか、あの高い足場で長く立っていれば、そういうことも起きるわけです。
その後、天山さんのダイビングヘッドバットはフィニッシャーから繋ぎ技へ役割を移しました。フィニッシュの座はアナコンダバイスやムーンサルトプレス(テンザン・プレス)へ。ちなみにそのムーンサルトプレスでも、2002年9月6日の西村修さんとの一戦で回転に失敗して頭からマットに落下し、意識不明に陥ったという記録が残っています(一週間足らずで復帰)。
この人、頭で稼いで、頭で危ない目に遭い続けているんです。資料には天山さんの通常のヘッドバットについて、頭が非常に硬いため威力が高く「頭蓋骨が常人の2割増しで厚い」「ダイヤモンドより硬い頭」などと評されたとまで書かれています。
天山さんが増やした「頭突きの枝」
さらに天山さんは、頭突きの一族に自分のオリジナルを足しています。
| 技名 | 内容 |
|---|---|
| ヘッドドロップ | 天山さんのオリジナル。仰向けの相手に覆いかぶさるように倒れ込み、脇腹に自分の頭を叩きつける。小島聡選手のスリングショット・エルボードロップと同時に決めるツープラトンで主に見られる |
| 釣鐘ヘッドバット | 天山さんのオリジナル。仰向けの相手の両足を大きく広げ、倒れ込むように股間へ頭を叩きつける。急所攻撃なので厳密には反則 |
ヘッドドロップの相方は、当然のように小島聡選手です。8月15日の引退試合の相手も小島選手。頭から突っ込む技のパートナーが、最後の対戦相手になる——テンコジ35年の関係については【闘魂列伝㉛】小島聡に書きました。
そしてもうひとつ。本間朋晃選手が頸髄損傷で欠場していた期間、天山さんら本隊の選手が試合中に「小こけし」を使っていたという記録が残っています。欠場中の後輩の技を、先輩たちがリングで代わりに出す。プロレスにしかない見舞いの形です。
🐄(ウッシ小声:これ、知ったとき本当に良い話だなと思いました。技を借りて、居ないやつの席を空けておく。営業でいえば、休職した同僚の担当先に「あいつ戻ってきますから」と言い続けるようなものです)
🎪 8月15日、両国——言えることと、言えないこと
⚖️ 公表情報から言えること(2026年8月7日時点)
- 天山広吉さんの引退試合は2026年8月15日(土)・両国国技館で行われました。大会名は「G1 CLIMAX 36 〜天山広吉引退〜」で、翌16日が同じ両国での優勝決定戦でした
- 相手は小島聡選手とのシングルマッチ。5分1本勝負と報じられていましたが、当日は時間無制限1本勝負に変更され、9分22秒、小島選手のラリアットで決着しました
- チケットは全席完売、当日は観衆7,777人の超満員札止めでした
- 大会はNJPW WORLDでLIVE配信され、アーカイブで視聴できます
- 当日ダイビングヘッドバットが出たかどうかは、アーカイブ映像でご確認ください。決着は小島聡選手のラリアット(9分22秒)でした
はっきり書いておきます。試合前に「引退試合でダイビングヘッドバットが見られます」と断言していた記事があったなら、それは書いた人の願望でした。
しかも今回は、他の技以上に慎重になるべき理由がありました。天山さんは長期欠場から回復が見込めず引退を決断した経緯があり、当初は5分1本勝負と報じられていました(当日は時間無制限1本勝負に変更・9分22秒)。頭からコーナーを跳ぶ技がそこに入るかどうかは、外から予想して書いていいことではありませんでした。
そして2026年8月15日、天山さんは引退しました。この技を放つ天山さんを公式戦で新しく目撃する機会は、これでなくなったことになります。引退決断の背景と体の状態は天山広吉さんはなぜ引退するのかに、キャリア35年の全体像は【闘魂列伝㉚】天山広吉にまとめてあります。
🐄(ウッシ小声:正直に言うと、私は出てほしくない気持ちが半分ありました。この記事をここまで書いた人間の本音です)
📺 8月15日をどう観返すか
スマホ・PCで観たい人はNJPW WORLD(月1,298円)。こちらもLIVE配信があり、アーカイブで見返せるのが強みです。テレビ派とネット派どちらが向いているかは天山広吉さんの引退試合を生中継で観る方法で比較表にまとめました。どの団体をどのサービスで、いくらで観られるのか(無料枠を含む)はプロレス配信サービス比較【2026年版】に料金つきで整理しました。「0円で観られる範囲」から確認したい人も、まずはここからどうぞ。
8月15日を振り返る一冊に。天山さん・小島選手・永田選手・中西さんの4人が、キャリアの実感を自分の言葉で語った一冊です。技の話ではなく「その技を出していた頃、体と心に何が起きていたか」が入っています。
🐄 ウッシ視点:一発ごとに、自分から前借りする
この記事、書きながらずっと気持ちが重かったです。
技記事はふつう「すごい」を書けばいい。破壊力がすごい、速度がすごい、美しい。ところがダイビングヘッドバットは、すごさの分だけ、かけた本人の残高が減る技なんですよ。相手を倒すたびに、自分の未来から前借りしている。
元祖のレイスさんの一撃は、結果として相手の柔らかいところに落ちる形だった。自分の背中は壊れたけれど、この技で相手に怪我をさせたことは一度もなかった。キッドさんは頭を狙って血まみれになり、その凄みで日本中を虜にして、やがて肩口へ狙いを変えた。天山さんは見得を切って会場を掴んでから跳び、のちにフィニッシュの座を他の技へ譲った。この技の名手はみんな、どこかで「威力の最大値を追わない」判断をしています。
私は営業を20年やってきました。21歳で営業に抜擢されて、最初のメーカー研修で「お前ら代理店は営業失格だ」とボロクソに否定された頃の私は、完全に頭部狙いでした。数字を作るために、休みも体力も家族との時間も前借りして突っ込んでいた。決まるんですよ、それで。血まみれになりながら決まるから、余計にやめられない。
やめられたのは、双子が生まれて、妻が体調を崩して、前借りできる残高がゼロだと気づいたからです。あそこで狙いを下げていなければ、私はたぶん今この文章を書いていません。
威力の最大値ではなく、続けられる高さを選ぶ。
名手はみんな、どこかで最大値を手放している。
だからこの技を観るときは、着弾の瞬間だけじゃなく、コーナーで立っている数秒を見てほしいんです。あそこで選手は、今日どこを狙うかを決めています。その判断のほうが、たぶん技より難しい。
❓ ダイビングヘッドバットのよくある質問
Q1. ダイビングヘッドバットとはどんな技ですか?
A. コーナー最上段もしくはセカンドロープからジャンプし、空中で体を大きく広げて、仰向けになった相手の頭部または肩口へ自分の頭を叩きつける飛び技です。凶器がかけ手自身の頭蓋骨である点が、他の飛び技と根本的に違います。
Q2. ダイビングヘッドバットの元祖は誰ですか?
A. ハーリー・レイスさんのオリジナル技とされています(Wikipedia「頭突き」がプロレス専門誌『Gスピリッツ』を出典として記載)。成り立ちは意図的な発明ではなく、トップロープに登った際に体勢を崩して落下してしまった「事故」から。観衆の反応が良かったので持ち技になったと、本人インタビューをもとに記録されています。
Q3. かける側は痛くないんですか?
A. 痛いです。しかも危険です。Wikipediaの健康被害の項では、ヘッドバットは過度の濫用により掛け手に脳震盪や慢性外傷性脳症といった健康被害が現れる場合があるとされ、なかでもダイビングヘッドバットは特に外傷性脳損傷との関連性が指摘される技と明記されています。元祖のレイスさんも、本人インタビューで長年の使用により自身の背中を痛めたと語っています(日本語版Wikipediaは「脊髄や頸椎に重い後遺症」とより強い表現で記しています)。
Q4. やり方を知りたいのですが、真似できますか?
A. 絶対にやめてください。この記事は観戦理解のための構造解説です。専門的な訓練を積んだプロレスラーが、受け身の技術と安全管理のもとで行って初めて成立する技であり、一般の方が真似をすれば自分にも相手にも生涯にわたる障害を残す危険があります。プロが自分の体を削って成立させている技を、素人がタダで真似できる道理はありません。
Q5. 天山広吉さんもダイビングヘッドバットを使いますか?
A. 使います。資料では凱旋帰国後に使用したフィニッシャーと記され、トップロープとセカンドロープにそれぞれ両足を置き、観衆に見得を切ってから放つムーブが特徴とされています。1995年2月12日の後楽園ホール大会では、この技で長州力さんからピンフォール勝ちを収めました。のちに繋ぎ技へ役割が移っています。
Q6. 本間朋晃選手の「こけし」もダイビングヘッドバットですか?
A. はい。「こけし」はダイビングヘッドバットで、本間さんの場合はトップコーナー上で直立し、頭を斜に構えて相手を威嚇しながら落下するのが特徴です。技名は観戦していた子どもの「こけしみたい」という言葉と、真壁刀義選手の「山形出身なんだからこけしでいいんじゃない?」という一言から。
Q7. 8月15日の引退試合でダイビングヘッドバットは見られましたか?
A. 当日の技の出入りは、アーカイブ映像でご確認ください。確実なのは、8月15日・両国国技館で天山さんが小島聡選手と引退試合を行い、5分1本勝負の発表から当日は時間無制限1本勝負に変更され、9分22秒、小島選手のラリアットで決着したこと。試合はNJPW WORLDでLIVE配信され、アーカイブで観られます。
Q8. 似ている技との違いは?
A. 着弾する部位が違います。ダイビングボディプレスは胴体、ムーンサルトプレスは反転して体全体、ダイビングエルボードロップは肘。ダイビングヘッドバットだけが頭です。詳しくはプロレスの空中殺法・飛び技まとめへ。
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📚 出典・参考(2026年8月7日確認・10件)
- Wikipedia:頭突き(ダイビング・ヘッドバットの定義/元祖=ハーリー・レイス/使い手一覧/垂直落下式/ヘッド・ドロップ・釣鐘ヘッドバット/健康被害の項)
- Wikipedia:ハーリー・レイス(生没年/NWA世界ヘビー級王座8回/ダイビング・ヘッドバットの誕生経緯と背中・脊髄への影響に関する記述)
- Inside Pulse:Pulse Wrestling Exclusive: Harley Race Interview & Book Notes(2008年11月25日)(技が事故から生まれた経緯/自身の背中を痛めた一方で「相手に怪我をさせたことは一度もない」との本人談。本記事で原文を確認)
- Wikipedia:ダイナマイト・キッド(生没年/得意技の項=頭部狙いの特徴・スキップ・ヤング戦・直下式/1986年の椎間板負傷/引退試合/晩年の身体状況)
- Wikipedia:天山広吉さん(プロフィール/1995年1月4日の凱旋・改名/1995年2月12日の長州戦と狼群団結成/飛び技の項=ダイビング・ヘッドバットのフォームと1997年の宙吊り/ヘッドバットの評価/ヘッドドロップ)
- Wikipedia:本間朋晃(「こけし」の解説と技名の由来/2017年3月の負傷と2018年6月23日の復帰/小こけしを本隊の選手が使用)
- G1 CLIMAX 36 特設サイト(新日本プロレス公式)(8月15日・両国国技館での天山広吉さん引退試合/本人コメント/16日の優勝決定戦)
- 東スポWEB:【新日本】天山広吉さんの引退試合が決定 盟友・小島聡と最後のシングルマッチ(2026年7月18日)(引退試合の相手発表・本人マイクの全文)
- 新日本プロレス公式YouTube:本間朋晃選手、奇跡の復活!!【こけし is BACK!!】(本記事の埋め込み動画・oEmbedで公式チャンネルを確認)
- ABEMA公式ヘルプ:ABEMAプレミアムの料金改定について(2026年4月1日改定=広告つき月680円/通常月1,180円)
※Wikipedia由来の記述は、その旨を本文中でも明示しています。技のフォーム・年代・使い手の扱いは資料により表記が異なる場合があり、試合日程・カード・配信の最新情報は必ず新日本プロレス公式サイトでご確認ください。健康被害に関する記述は、公開資料が明記している範囲のみを記載し、個別の選手の症状と特定の技を因果関係で結びつける記述は本記事では行っていません。
⚠️ 再々掲・免責:本記事は観戦理解・技術構造の解説を目的としています。ダイビングヘッドバットは、かける側の頭部・頸椎に直接ダメージが返る極めて危険な技です。一般の方が他人に掛けることは重大な傷害につながり、刑事・民事の責任を問われる可能性もあります。絶対に真似しないでください。
プロレスの技には、たいてい「相手をどう倒すか」という設計思想があります。ダイビングヘッドバットにあるのは、それに加えて「自分をどこまで差し出すか」という問いです。
だからこの技を選んだ選手は、みんなどこかで覚悟の話をしている。血まみれで勝ち名乗りを受けたキッドさんも、この技で相手を怪我させなかったレイスさんも、不安定な足場で客席を煽ってから跳んだ天山さんも。技を通して、自分の生き方を出してしまっているんです。
2026年8月15日、両国国技館。観衆7,777人の超満員札止め。コーナーの最上段に誰かが登った瞬間の、あの一瞬の静けさだけは、たぶん35年前から変わっていませんでした。見逃した方は、アーカイブで一緒に見届けましょう。
闘魂で、人生を叩き上げろ。マイペースにいきましょう🐄
営業部長のウッシでした。
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