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エメラルドフロウジョンとは?やり方と三沢光晴さんの美学
— 必殺技解説 —

エメラルドフロウジョンとは?やり方と三沢光晴さんの美学

USSIBLOG

※本記事はプロモーションを含みます

⚠️ 【重要・免責】本記事はプロレス観戦をより深く楽しむための「技術構造の解説」です。プロレス技は専門的な訓練を積んだプロレスラーだけが行う高度な格闘技であり、なかでも相手を逆さに担ぎ上げて頭部から落とす技は、受け身を知らない人が受ければ頸椎・頭部の重大な損傷につながります。絶対に真似しないでください。

「三沢さんが相手を肩に担いで、真横にドスンって落とすやつ。あれ何ていう技?」

「エメラルドフロウジョンって、パイルドライバーとどう違うの?」

こんにちは、営業部長のウッシです。

このモヤモヤ、原因ははっきりしています。エメラルドフロウジョンは担ぎ上げてから落ちるまでの間に「持ち替え」が挟まる技だからです。パイルドライバー系に見えて、最後の一瞬でフォームが横へ切り替わる。目で追っている途中で軸が変わるので、「結局どういう技だったのか」が残らない。

しかもこの技、1998年の初公開時と現在では形が違います。初期型は正式名すら決まっておらず、暫定で「変型ツームストーン・パイルドライバー」と呼ばれていました。だから古い映像と後年の映像を見比べると、同じ技名なのに落ち方が別物に見える。あなたの記憶違いではありません。

この記事では、エメラルドフロウジョンを「抱える・担ぐ・倒れ込む」の3工程に切り分けて図解します。技名の意味も、改良の経緯も、いま誰がこの技を継いでいるのかも、資料で裏が取れた範囲だけを書きます。

✅ 結論:エメラルドフロウジョンとは(30秒で)

  • 三沢光晴さんのオリジナル技であり、代名詞的フィニッシュホールド。分類上はパイルドライバーの派生技にあたります
  • 構造は正面から相手の胴を抱え込み、上下逆さまにしながら担ぎ上げて自分の片肩にうつ伏せで乗せ、片手で後頭部(または首の付け根)、もう片手で腰を抱えたまま、体重を乗せて自分の横側へ倒れ込み、相手を後頭部からマットへ落とすもの
  • 技名の「エメラルド」は三沢さんのイメージカラーであるエメラルドグリーン「フロウジョン」は"滝・流れ"を意味します
  • 初公開は1998年1月26日、全日本プロレス・大阪府立体育会館第一競技場での三冠ヘビー級王座防衛戦(対・秋山準選手)。当時のフォームは現在と異なり、原型エメラルド・フロウジョンと呼ばれます
  • 原型は危険度が高く、決めるまでに時間がかかるという欠点があり、のちに相手の力量に応じて落とし方(角度)を調整でき、スムーズに移行できる現行型へ改良されました
  • 派生の家系が非常に広く、タイガー・フロウジョン(丸藤正道選手)/グロリア(内藤哲也選手)/TIME BOMB(高橋ヒロム選手)などが、この技を源流に持ちます

🐄(ウッシ小声:「相手の受け身の技量に応じて角度を調節できる」——資料のこの一行が、私はこの技のすべてだと思っています。あとで詳しく書きます)

★★★★★ 投げ技(パイルドライバー系)
エメラルド・フロウジョン
緑の滝が、真横へ落ちる
👁 かけ方
オクラホマ・スタンピードのように正面から相手の胴を両腕で抱え込み(もしくはボディスラムのように片腕で後頭部・首の付け根、もう片腕で股間を抱え)、上下逆さまにしながら担ぎ上げて自分の片肩へうつ伏せに乗せる。そこから片手で後頭部あるいは首の付け根、もう片手で腰を抱え、体重を乗せながら自分の横側へ倒れ込み、相手を後頭部からマットへ落とす。相手の受け身の技量に応じ、背中から落とすなど角度を調節できる。
⚔️ STATUS※プロレス30年・ウッシの独断評価
💥 破壊力 9
⚡ 速度 6
🎯 決定力 10
🎓 習得難度 9
⚠️ 危険度 10
🎭 魅せ度 9
🥋 考案者・使い手
考案者は三沢光晴さん(1962年6月18日・北海道夕張市出身/185cm・110kg/1981年デビュー。全日本プロレス→プロレスリング・ノア。2009年6月13日逝去)。主な使い手として潮﨑豪選手・丸藤正道選手・小川良成さん(2024年引退)・武藤敬司さん・サモア・ジョー選手(アイランド・ドライバー)・オカダ・カズチカ選手らの名が挙げられる。
📜 ひとくちメモ
初公開時は名称が定まらず、暫定で「変型ツームストーン・パイルドライバー」と仮称されていた。原型は首への負担が大きく、決めるまでに時間がかかるという欠点があり、のちに落とし方を調整できる現行型へ改良されている。技を強くするのではなく「加減できるようにする」ための改良だった点が、この技のいちばんの特徴。

📌 この記事でわかること

  • エメラルドフロウジョンの正体と、パイルドライバー系である理由
  • やり方を「抱える・担ぐ・倒れ込む」の3工程で図解分解
  • 技名の意味——「エメラルド」と「フロウジョン」がそれぞれ指すもの
  • 1998年1月26日、大阪。初公開されたときの形(原型)と、いまの形の違い
  • なぜフォームが改良されたのか——欠点として記録されている2つのこと
  • 雪崩式・パスキャッチ式・引き抜き式・断崖式・ツープラトン式の整理
  • この技から枝分かれした派生技の家系図(グロリア/TIME BOMB/タイガー・フロウジョンほか)
  • 2026年、いまリングでこの技を放っている選手は誰か

⏱ 30秒で片づく|エメラルドフロウジョンの疑問6つに即答

長い本文の前に、検索してきた人がまず知りたいところだけ潰しておきます。

疑問答え
何の技?パイルドライバーの派生技。逆さに担ぎ上げてから、自分の横側へ倒れ込んで後頭部から落とす
誰の技?三沢光晴さんのオリジナル技であり、代名詞的フィニッシュホールド
「エメラルド」の意味は?三沢さんのイメージカラー=エメラルドグリーンから
「フロウジョン」の意味は?「滝、流れ」を意味する
いつ生まれた?1998年1月26日、全日本プロレス・大阪府立体育会館第一競技場の三冠ヘビー級王座防衛戦で初公開
いまも観られる?観られます。潮﨑豪選手が現役のフィニッシュとして使用中(2026年8月25日の松山大会でも決着技になっています)

🧬 エメラルドフロウジョンの正体|「パイルドライバー」の血を引く一族

まず分類から。エメラルドフロウジョンは、技の系統でいうとパイルドライバーの派生技です。

パイルドライバーというのは、相手を逆さまに抱え上げて頭部からマットへ突き刺す技の総称。杭(パイル)を打ち込む機械が語源です。ツームストーン・パイルドライバーはその代表格で、エメラルドフロウジョンの初期型もこの体勢からスタートしていました。

項目内容
分類投げ技(パイルドライバー系)
考案者三沢光晴さん
入口正面から相手の胴を抱え込む(オクラホマ・スタンピード型/ボディスラム型の2種)
担ぎの形上下逆さまにして、自分の片肩にうつ伏せで乗せる(相手の頭部は前方)
落とす方向担いでいる肩の側=自分の横
落下部位後頭部(角度調整で背中)
現在の役割フィニッシュホールド

面白いのは、パイルドライバー系でありながら「真下に突き刺さない」ところです。ツームストーンが垂直に落とすのに対し、エメラルドフロウジョンは担ぎ上げた相手を横倒しにしながら、自分ごと真横へ崩れ落ちる。垂直の力を、横方向の落下に変換している。

この「横へ倒れ込む」という一手が、この技を他のどんな技とも違うものにしています。

🐄(ウッシ小声:中継で「エメラルド!」と叫ばれてから決着まで、体感1秒もありません。だから何度観ても構造が頭に残らない。この記事を書いた動機がまさにそれです)

🔥 エメラルドフロウジョンのやり方|抱える・担ぐ・倒れ込むの3工程

エメラルドフロウジョンの掛け方 模式図(3工程) 正面から相手の胴を抱え込み、上下逆さまにしながら片肩へうつ伏せに担ぎ上げ、後頭部と腰を抱えたまま自分の横側へ倒れ込んで相手を後頭部からマットへ落とす3工程の抽象図。 エメラルド・フロウジョン|3工程の構造 ① 抱える ② 担ぐ ③ 倒れ込む 正面から胴を両腕で抱え込む 向かい合って正対 上下逆さまにして片肩へうつ伏せに乗せる 相手の頭は前方・体は水平 体重を乗せて自分の横側へ倒れ込む 相手は後頭部からマットへ 衝撃点:後頭部・頸部。角度調整で背中側へ逃がすこともできる ※模式図(実姿勢を簡略化) 絶対に真似しないでください

観戦理解のために、資料に記録されている動きを工程ごとに分けます。

工程①:抱える——正面から胴を捕らえる(入口は2種類)

まず相手と正対します。背後を取るタイプの技ではありません。ここがバックドロップやジャーマンスープレックスとの決定的な違いです。

捕らえ方には2つのパターンが記録されています。

入口の型手の掛け方
オクラホマ・スタンピード型正面から相手の胴を両腕で抱え込む
ボディスラム型片腕で後頭部(または首の付け根)、もう片腕で股間を抱え込む

どちらでも成立しますが、この時点で「どちらの肩に乗せるか」がもう決まっています。落とす方向は担いだ肩の側なので、抱えた瞬間に着地点まで決まっている技なんです。

工程②:担ぐ——上下逆さまにして、片肩にうつ伏せで乗せる

抱え込んだら、相手を上下逆さまにしながら担ぎ上げ、自分の片方の肩の上にうつ伏せで乗せます。このとき相手の頭部は前方を向いているのがポイント。

ここが理解のキモです。多くの人が「担ぎ上げてから落とす技」を、担いだ時点でひとかたまりに見てしまう。でもエメラルドフロウジョンはこの状態で一度”止まれる”んです。相手は肩の上で水平、頭は前。この静止した一瞬に、会場が「あっ」となる。

そしてここから手を持ち替えます。片手で相手の後頭部あるいは首の付け根、もう片方の手で腰のあたりを抱える。この持ち替えが挟まるせいで、パイルドライバー系なのに垂直落下にならない。

🐄(ウッシ小声:110kgの人が同じくらいの体重の人を逆さに担いで、そこで一拍止まって、さらに空中で手を持ち替える。文字にすると一行ですが、これができる人が世界に何人いるんだという話です)

工程③:倒れ込む——体重を乗せて、自分の横へ崩れる

そして体重を乗せながら、自分の横側へ倒れ込みます。相手は肩の上から放り出される形で、後頭部からマットへ

「落とす」というより「一緒に倒れる」のが正確です。担いだ人間の体重が、そのまま相手を地面に押し込む力になる。技名の「フロウジョン=滝、流れ」というのは、この担いだ高さから真横へ一気に流れ落ちる軌道そのものを指しています。

そしてもう一つ、資料に明記されている重要な性質。

⚖️ この技の設計思想がわかる一行

「相手の受け身の技量に応じて背中から落とすなど、角度を調節する事ができる」——つまりエメラルドフロウジョンは、受ける側の力量に合わせて威力を可変できる技として設計されています。全開で頭から突き刺すことも、背中側へ逃がすこともできる。同じ技名のまま出力を切り替えられるわけです。

⚠️ 再掲・免責:逆さに担ぎ上げて頭部方向へ落とす技は、受け手が受け身の技術で衝撃を分散して初めて成立します。訓練を受けていない人が他人に掛ければ、頸椎・頭部の重大な損傷につながります。本記事は観戦理解のための構造解説です。

💚 技名の意味|「エメラルド」と「フロウジョン」

技の名前を分解すると、この技が三沢さんという人そのものだと分かります。

言葉意味由来
エメラルド宝石のエメラルド、その緑色三沢さんのイメージカラーであるエメラルドグリーンから
フロウジョン(Flowsion)滝、流れ」を意味する担いだ高さから一気に流れ落ちる軌道

三沢さんは、エメラルドグリーンのコスチュームでリングに上がり続けた選手です。そして、そのエメラルドグリーンは、のちにプロレスリング・ノアという団体のイメージカラーそのものになりました。

つまり技の名前が、選手の色であり、団体の色でもある。ここまで一致している必殺技は、日本のプロレス史でもそう多くありません。「モンゴリアンチョップ」も「ラリアット」も、名前は技の形を説明しているだけです。エメラルドフロウジョンだけは、技の名前が「誰の技か」を先に名乗っている

🐄(ウッシ小声:営業で言うと、商品名に自分の名前が入っているようなものです。売れなかったときに逃げ場がない。それを代名詞にしてしまうんだから、覚悟が違います)

🕰 1998年1月26日、大阪|初公開された「原型」と、いまの形

エメラルドフロウジョンの初公開は、1998年1月26日。全日本プロレス・大阪府立体育会館第一競技場大会での、秋山準選手との三冠ヘビー級王座防衛戦でした。

ただし、このとき出た技は、いま私たちが知っている形とは違います

原型エメラルド・フロウジョンの手順

資料に記録されている初公開時のフォームは、次のとおりです。

  1. ツームストーン・パイルドライバーの要領で相手の胴を両腕で抱え込み、逆さにしながら担ぎ上げる
  2. そのまま相手の体を自分の横側へずらす
  3. さらに相手の首下付近と腰を抱えるように腕を持ち替えてから、頭部から落とす

この形は「原型エメラルド・フロウジョン」「オリジナル・エメラルド・フロウジョン」と呼ばれます。また、考案してから名称が定まるまでの間は、「変型ツームストーン・パイルドライバー」と仮称されていました。

原型の欠点として記録されている2つのこと

そして、この原型にははっきり欠点が記録されています

欠点内容
① 危険性相手の首などへの負担が大きく危険
② 所要時間技を決めるまでに時間がかかる

②が地味に効きます。担いでからずらして、さらに持ち替える——工程が多いぶん、相手に脱出の余地が生まれる。フィニッシュホールドとして致命的です。

そこで、相手の力量に応じて落とし方を調整でき、なおかつスムーズに技へ移行できるように、現在の型へ改良されました。

時期フォーム性格
原型(1998年1月26日〜)ツームストーン型で抱え上げ→横へずらす→持ち替えて頭部から落とす首への負担が大きく、決めるまでに時間がかかる
現行型正面から抱えて片肩へうつ伏せに担ぎ、後頭部と腰を抱えて横へ倒れ込む落とす角度を相手に応じて調整できる/移行がスムーズ

改良の目的が「もっと強くする」ではなく「加減できるようにする」だった——ここが、この技のいちばん大事なところだと私は思っています。

必殺技の改良というと、ふつうは高く・速く・危なくの方向へ行きます。エメラルドフロウジョンの改良は逆で、相手に合わせて出力を落とせる余地を、技の中に組み込んだ。フィニッシュホールドとしての説得力は保ったまま、受ける側の安全マージンを増やした改造です。

同じ「危険だから削った」系の改良としては、天山広吉さんのマウンテンボムが有名です。あちらは威力そのものを下げてつなぎ技へ格下げした。エメラルドフロウジョンはフィニッシャーの座を保ったまま、可変にした。同じ問題への、まったく違う回答です。

🐄(ウッシ小声:私の仕事で言うと、値引きの決裁権を自分に持たせるようなものでしょうか。上限まで押し切ることもできるし、相手を見て緩めることもできる。……たぶん三沢さんに失礼な例えですが、正直そう思ったんです)

📺 動画で観る(公式)

構造は文章より映像のほうが早い。プロレスリング・ノア公式チャンネルが、三沢光晴メモリアル2021で武藤敬司さんが放ったエメラルドフロウジョンを公開しています。

📺 武藤敬司さんのエメラルドフロウジョン|三沢光晴メモリアル2021(プロレスリング・ノア公式チャンネル)

担いでから一拍止まるところと、横へ倒れ込むところ。この2点を意識して観ると、工程②と③がそのまま目で追えます。

🌪 バリエーション5種|同じ技名で、入口と高さを変える

エメラルドフロウジョンは、「担いだ体勢」に至るまでの経路をいくらでも差し替えられる技です。だから状況別のバリエーションが豊富に記録されています。

バリエーション内容
雪崩式コーナー最上段や2段目から仕掛ける。落差ぶんの威力が加算される
パスキャッチ式タッグマッチで、味方が担ぎ上げた相手を自分の肩へ乗せてもらってから敢行する。味方がブレーンバスターで持ち上げ、コーナーポスト上で待つ自分へ相手を渡し、雪崩式で見舞う型もある
引き抜き式自分の背後にいる相手の頭部を両手で掴み、そのまま上方へ引き抜いて肩に乗せ、リング中央へ移動して敢行する。コーナー上で飛び技を狙う相手に決めることもある
断崖式エプロンサイドから場外へ向けて敢行する、きわめて危険な形
ツープラトン式三沢さんとパートナーの小川良成さんが使用した合体式。相手の両サイドからそれぞれが体を持ち上げて落とす

注目したいのは「引き抜き式」です。背後にいる相手の頭を掴んで、上に引き抜いて肩へ乗せる——これ、正面から抱えるという工程①を丸ごと飛ばしているんです。フィニッシュの形さえ守れば、そこへ至る道は問わない。技を「形」ではなく「着地点」で定義している証拠です。

タッグでの合体技の作り方については、テンコジカッターの記事で「担ぐ人と決める人」の分業を分解しました。パスキャッチ式はその真逆で、担ぐ役が味方で、決めるのが自分という構造になっています。

🌳 派生技の家系図|この技を源流に持つ技たち

エメラルドフロウジョンが日本プロレス史で特別なのは、この技から枝分かれした技の数です。ざっと整理するとこうなります。

三沢さん自身が作った派生

技名初公開構造
エメラルド・フロウジョン改2003年12月6日・ノア横浜文化体育館(対・越中詩郎選手)ブレーンバスターの体勢で抱え、エメラルドフロウジョンの形へ持ち替えて落とす。この試合を実況した日本テレビの平川健太郎アナウンサーが「スーパー・エメラルド・フロウジョン」と呼んだが、正式な呼び名はない
旋回式エメラルド・フロウジョン2007年4月28日・ノア日本武道館(対・佐野巧真さん)ファイヤーマンズキャリーの体勢から相手の体を旋回させ、原型エメラルド・フロウジョンの形で落とす

どちらも正式名称が決まっていません。「変形エメラルド・フロウジョン」と呼ばれたり、「改」と呼ばれたり。技を増やしても名前を付けに行かないあたりが、なんというか、らしいです。

他の選手が源流として使った技

技名使い手構造の要点
タイガー・フロウジョン丸藤正道選手タイガードライバーとエメラルドフロウジョンを掛け合わせた技。リバース・フルネルソンから抱え上げ、上方でロックを解いて両腕で胴を抱え込み、斜め後方へ倒れながら頭部から落とす
ポールシフト式エメラルド・フロウジョン丸藤正道選手ポールシフト(フィッシャーマンズ・スープレックスと同じ形)で担ぎ上げ、持ち替えてエメラルドフロウジョンの形で落とす。2014年6月13日の三沢光晴メモリアルナイトで初公開
グロリア内藤哲也選手変形のリストクラッチ式サイドバスター。相手の左腕をハンマーロックで極めつつ首を抱えて持ち上げ、垂直落下気味に後頭部を叩きつける。内藤選手自身が「丸藤選手のタイガー・フロウジョンを参考にした」と語っている。技名はスペイン語で「栄光」
TIME BOMB高橋ヒロム選手ファイヤーマンズキャリーで担ぎ、振り子の体勢で相手を旋回させ、右サイドへ体重を乗せて倒れ込み、頭から背中にかけて叩きつける
アイランド・ドライバーサモア・ジョー選手エメラルドフロウジョンを自身の技名で使用
E.V.OB×Bハルク選手バンプハンドル・スラムのように抱えてエメラルドフロウジョンのように落とす
ラグナロクYAMATO選手リバース・ブレーンバスターの体勢から担ぎ上げ、シットダウンと同時に左サイドへ後頭部から突き刺す
CCD(コジ・クラッシュ・ダイナマイト)小島聡選手三沢さんとの対戦を経て、エメラルドフロウジョンを参考に考案。担ぐまでは同じで、倒れ込む方向が逆サイド
鏡割矢野通選手ハーフネルソンで組みつき右腿を抱えて逆さに持ち上げ、エメラルドフロウジョンとは逆サイドへ落とす(※資料上は派生技ではなく「類似技」として整理)

この表、ちょっと異常です。新日本プロレスで一時代を築いた2人(内藤選手・高橋選手)の大技が、どちらもこの技の血を引いている。しかも内藤選手は「丸藤選手のタイガー・フロウジョンを参考にした」と自分で語っている。三沢さん→丸藤選手→内藤選手という団体をまたいだ三段の系譜が、資料としてはっきり残っているわけです。

技には国境も団体の壁もない。地方の代理店営業だった私からすると、こういう話は相当グッときます。

💡 タイガー・フロウジョンについて記録されていること:丸藤正道選手は、この技を対・三沢光晴さん用として考案し、温存していたと伝えられています。三沢さんは2009年6月13日に逝去され、この技が三沢さんに向けて放たれることはありませんでした。丸藤選手が初公開したのは、同年12月9日の日本武道館大会、長期欠場からの復帰戦(対・青木篤志さん)でのことです。

🔥 2026年、この技はいまリングで生きている

「エメラルドフロウジョンって、もう観られないんでしょ?」——これ、けっこう言われます。

答えは「観られます」です。

潮﨑豪選手が、いまも決着技として使っている

潮﨑豪選手は三沢さんの背中を追ってきた選手で、エメラルドフロウジョンを思いを込めた場面で放つ決め技として、いまも使っています。

2026年8月25日、全日本プロレス『熱闘!サマーアクションウォーズ2026』松山大会。矢野安崇選手とのシングルマッチで、潮﨑選手はエメラルドフロウジョンで3カウントを奪いました。試合後、潮﨑選手は「俺は今日、俺の思いを込めて、そして彼の思いを受けて、あのフィニッシュでいかせてもらいましたよ」とコメントしています。

なお潮﨑選手は、2025年9月30日をもってプロレスリング・ノアとの契約が満了となり、2026年1月1日付で10年3か月ぶりに全日本プロレスへ再入団しています。この技が生まれた1998年1月26日の大阪も、全日本プロレスのリングでした。28年後、同じ団体のリングでこの技が3カウントを奪っている。プロレスの技が「文化」だと言われるのは、こういうところです。

継承している主な現役選手

選手
潮﨑豪選手(全日本プロレス)エメラルド・フロウジョンをそのままフィニッシュとして使用
丸藤正道選手(プロレスリング・ノア)タイガー・フロウジョンポールシフト式。大一番の決め技として
小川良成さん(2024年8月に現役引退。ノア公式の引退発表による)三沢さんとのツープラトン式を組んだパートナー
内藤哲也選手(フリー・プロレスリング・ノア主戦場/2025年4月16日に退団が発表され、5月4日の福岡大会を最後に新日本プロレスを退団)グロリア。丸藤選手のタイガー・フロウジョンを参考に考案
高橋ヒロム選手(2026年2月11日の大阪大会を最後に新日本プロレスを退団。その後WWE参戦が報じられています)TIME BOMBTIME BOMB IIダイナマイト・プランジャー
矢野通選手(新日本プロレス)鏡割。逆サイドへ落とす形

技の名前だけが、選手より長生きする。エメラルドフロウジョンは、その典型です。

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📺 丸藤正道vs潮崎豪(プロレスリング・ノア公式チャンネル)

継承者ふたりが正面からぶつかる一戦です。公式チャンネルにはこうしたダイジェストが上がっていますが、全編を通しで観たいならABEMAが入口としていちばんラクです。

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🐄 ウッシ視点:強くする改良と、加減できるようにする改良

正直に書いておきます。私は三沢さんの試合を生で観たことがありません。

私の初観戦はドラゴンゲートで、しかも今の妻と行きました。四天王プロレスは、私にとってはテレビとビデオの中の出来事です。高校時代にTSUTAYAとゲオでプロレスのビデオとDVDを片っ端から借りていた、あの時期に観たものです。だから「あの日の武道館の空気は」みたいなことは、私には書けません。

それでも映像で何十回と観てきたなかで、ずっと引っかかっていたことがあります。

エメラルドフロウジョンは、担いだところで一拍止まるんですよね。

普通、必殺技は速いほうがいい。相手に逃げる時間を与えないからです。実際、原型の欠点として「技を決めるまでに時間がかかる」とはっきり記録されている。それなのに現行型でも、担ぎ上げてから倒れ込むまでに、明らかに間があります。

あの一拍は何なのか。私の勝手な読みですが、あそこが「加減を決める場所」なんじゃないかと思っています。資料には「相手の受け身の技量に応じて背中から落とすなど角度を調節する事ができる」とある。角度を選ぶには、選ぶための時間が要る。技の中に、判断のための一拍が組み込まれている。

営業を20年やってきて、これは相当刺さります。

私は21歳で営業に抜擢されて、最初のメーカー研修で「お前ら代理店は営業失格だ」とボロクソに否定されました。あの頃の私は、提案を投げる前に一拍置くということをしなかった。相手の受け身の技量、つまり相手がその話をどこまで受け止められるかを見ずに、全開で落としていたわけです。数字は出ることもありました。でも、落とされた側は毎回痛かったと思います。

いま私が現場でやっているのは、たぶん担いでから一拍置くことだけです。同じ話をするにしても、角度を変えられるようになった。強くなったわけじゃない。加減できるようになっただけです。

必殺技の改良は、ふつう「もっと強く」の方向へ行く。

この技の改良は、「加減できるように」の方向へ行った。

技の名前に自分の色を入れて、その技を可変にした。強さの証明ではなく、相手を見る余白を必殺技に持たせた。私はそこがエメラルドフロウジョンの美学だと思っています。

🐄(ウッシ小声:ちなみに私が営業で最初に覚えるべきだった技は、たぶん「聞く」でした。20年かかりました)

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❓ エメラルドフロウジョンのよくある質問

Q1. エメラルドフロウジョンは誰の技ですか?

A. 三沢光晴さんのオリジナル技であり、代名詞的フィニッシュホールドです。分類としてはパイルドライバーの派生技にあたります。

Q2. エメラルドフロウジョンのやり方を簡単に教えてください。

A. 正面から相手の胴を抱え込み、上下逆さまにしながら担ぎ上げて自分の片肩へうつ伏せに乗せ、片手で後頭部(または首の付け根)、もう片手で腰を抱えたまま、体重を乗せて自分の横側へ倒れ込み、相手を後頭部からマットへ落とす技です。詳しい3工程の分解は本文の図解をどうぞ。絶対に真似はしないでください。

Q3. 「エメラルドフロウジョン」という名前の意味は?

A. エメラルド=三沢さんのイメージカラーであるエメラルドグリーンフロウジョン=「滝、流れ」を意味します。担いだ高さから真横へ一気に流れ落ちる軌道が、そのまま名前になっています。

Q4. 初めて出たのはいつの試合ですか?

A. 1998年1月26日、全日本プロレス・大阪府立体育会館第一競技場大会の三冠ヘビー級王座防衛戦(対・秋山準選手)です。ただしこのときのフォームは現在と異なり、原型エメラルド・フロウジョンと呼ばれます。名称が定まるまでは「変型ツームストーン・パイルドライバー」と仮称されていました。

Q5. なぜフォームが改良されたのですか?

A. 原型には①相手の首などへの負担が大きく危険、②技を決めるまでに時間がかかるという2つの欠点が記録されています。そこで相手の力量に応じて落とし方を調整でき、なおかつスムーズに技へ移行できるように、現在の型へ改良されました。

Q6. パイルドライバーやツームストーンとは何が違いますか?

A. 落とす方向が違います。ツームストーン・パイルドライバーは相手を逆さに抱えてほぼ真下(垂直)へ突き刺す技。エメラルドフロウジョンは片肩にうつ伏せで担いでから、自分の横側へ倒れ込んで落とす技です。垂直の力を横方向の落下に変換しているのが最大の違いで、途中に手の持ち替えが挟まります。投げ技全体の見分け方はプロレス技 一覧【図解】8ジャンル保存版に整理しています。

Q7. 雪崩式エメラルドフロウジョンはありますか?

A. あります。コーナー最上段や2段目から仕掛ける形が記録されています。ほかに断崖式(エプロンサイドから場外へ)、パスキャッチ式(タッグで味方に担がせてもらう)、引き抜き式(背後の相手の頭を掴んで引き抜く)、ツープラトン式(小川良成さんとの合体技)といったバリエーションがあります。

Q8. いまエメラルドフロウジョンを使っている選手はいますか?

A. います。潮﨑豪選手が現役のフィニッシュとして使用しており、2026年8月25日の全日本プロレス松山大会でも決着技になりました。派生技まで含めると、丸藤正道選手(タイガー・フロウジョン)、内藤哲也選手(グロリア)、高橋ヒロム選手(TIME BOMB)、矢野通選手(鏡割)など、この技の系譜は各団体へ広がっています(グロリアは大一番の決め技として使われてきました)。

Q9. エメラルドフロウジョン改と旋回式の違いは?

A. 入口の体勢が違います。「改」はブレーンバスターの体勢から抱え、エメラルドフロウジョンの形へ持ち替えて落とす形(2003年12月6日・ノア横浜文化体育館、対・越中詩郎選手戦で初公開)。「旋回式」はファイヤーマンズキャリーの体勢から相手の体を旋回させ、原型エメラルドフロウジョンの形で落とす形(2007年4月28日・ノア日本武道館、対・佐野巧真さん戦で初公開)です。どちらも正式名称は決まっていません。

Q10. 素人でも真似できますか?

A. 絶対にやめてください。相手を逆さに担ぎ上げて頭部方向へ落とす技であり、資料にも原型について「相手の首などへの負担が大きく危険」と明記されています。受け身の訓練を積んだプロレスラー同士でしか成立しません。本記事は観戦理解のための構造解説です。

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📚 参考・出典(7件・2026年8月27日確認)

※技のフォーム・呼称は資料により表記が分かれる場合があります。「エメラルド・フロウジョン改」「旋回式エメラルド・フロウジョン」はいずれも正式名称が定まっていないため、本記事では資料上もっとも一般的な呼び方を採用しました。選手の所属・試合結果は2026年8月27日時点の情報です。最新情報は各団体の公式サイトでご確認ください。

⚠️ 再々掲・免責:本記事は観戦理解・技術構造の解説を目的としています。プロレス技を一般の方が他人に掛けることは極めて危険であり、刑事・民事の責任を問われる可能性もあります。絶対に真似しないでください。

おわりに

エメラルドフロウジョンは、名前に自分の色を入れた技です。エメラルドグリーンは三沢光晴さんの色であり、のちにプロレスリング・ノアの色になりました。

そして、その技はいまも生きています。潮﨑豪選手が全日本のリングで3カウントを奪い、丸藤正道選手が大一番で奥の手として出し、内藤哲也選手や高橋ヒロム選手も、この技を源流に持つ大技をそれぞれのリングへ持って行きました。1998年1月26日に大阪で生まれた技が、28年たっても現役です。

技のやり方を知ると、観戦は確実に面白くなります。次にこの技が出たら、ぜひ担いだところで一拍止まる瞬間を探してみてください。あそこが、この技のいちばん静かで、いちばん優しい場所です。

それではまた次のプロレス記事でお会いしましょう。マイペースにいきましょう🐄

営業部長のウッシでした。


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